金碗家は、『神余(じんよ)→カミアマリ→カムマリ→金碗(カナマリ)』と神余の妾から派生した一族である。安房に戻ってきた英雄として親しまれた金碗八郎ですが、漫画では描き切れなかった「蟹」のエピソードがありました。
金碗八郎は、原作では乞食に身をやつし、皮膚には瘡(かさ)ができ、とても人には見えない風体として描かれています。氏元も「本人だと名乗っても誰も金碗殿だと、気づく人はいないだろう」と語っています。金碗も故主のため、誰一人気づかずとも命を捨てて尽くす覚悟を決めていました。
そこで里美義実は、書物や見聞から得た得意の知識で、金碗八郎の瘡は、内から発した瘡ではなく、漆(うるし)の毒に触れたためにできた外的なものだと突き止めます。
「漆は蟹(かに)を嫌う」
「漆を塗る家で蟹を煮ると、漆が固まらない」
という話をもとに義実は、地元の漁氏から蟹をすべて買い取り、生きた蟹の甲を砕いて金碗の体に塗り、残った蟹をあぶり食べされたところ、瘡は瞬く間にこぼれ落ち病を治したのでした。
諦めかけた金碗は感涙し、希望を見出した義実達に感謝し「文武の道に長じた良将。名医は国を医する」と語り、並々ならない忠誠心を持って従うことを誓います。こんなエピソードがあってか、金碗八郎の風刺画には、蟹が里見家の家紋の旗を持っている絵で描かれています。
第4話で、南総里見八犬伝の発端部分・前半の主要人物が出揃いました。
復讐の鬼となった金碗八郎孝吉。果たして、この二人の出会いは、良いものだったのか、はたまた、義実達の破滅を招く悪縁なのか、物語は、まだまだ続きます。
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